リトライ。


「そうだよ!バッシュ選んでとか他の子にも言ったりしてるんでしょ」

「そう見える?」


じり、と私に詰め寄る陽介。


「み、見える」


と答えれば、彼はむっと口を尖らせて言った。


「そんなのポンポン人に頼んだりしねぇよ。

分かんねぇのかよ……お前だから頼んだのに」


だんだんと小さくなる声にばっ、と顔をあげればぱちり、と目が合った。


ドキン、と大きく音を立てる心臓は隠すことは出来ても誤魔化すことは出来ない。

何かをきっかけにすぐに動き出してしまうんだ。


「なぁ、沙奈」


静かに風が吹いた。

ぱち、と瞬きをして彼を見つめる。



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