リトライ。


何話してるのかな。

気になりつつも、声をかけるのをやめようと背中を向けた。


その時。


「おー沙奈。帰ろうぜ~」


陽介が呼びかけて来た。

ぱちり、と目が合って、それと同時に後ろで寂しそうな表情を浮かべる彼女も目に入る。


しかし、彼はそれに気づくことなく走ってこっちにやってくると言った。


「待ってたんだよ、お前のこと。今日は報告したいことがあってよー」

「あの子は良かったの?」

「ああ?麻里のこと?」


麻里って名前で呼んでるんだ……。


「なんか俺のプレー見て惚れたんだってよ~、で、ちょっと話してただけだからへーき」


けらけら笑いながらそんなことを言う陽介。

きっとあの子、陽介のこと好きだよね。


さっきふと見せた寂しそうな顔を思い出す。


好きな人に惚れたって面と向かって言えるのはすごいと思った。


私だったらきっと言えないだろう。




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