リトライ。


ぎゅっと手を握りしめる。

私はうつむいて、小さな声で言った。


「そんな陽介みたいにみんな強く勝負できるわけじゃないもん……」

「どういう意味だよ?」


陽介は少しトーンを抑えて聞いて来る。


「そのままの意味だよ!陽介みたいにみんな上手く出来るわけじゃない」


私がそう言い放つと、彼は妙に落ちついた声で聞いてきた。


「お前さ……俺のこと超えたいんじゃねぇのかよ?」

「超えるなんて無理、でしょ」


追いつきたいと陽介を目標にして来た。

だけど、追いつくのはおろか、超えるなんて絶対に無理だと悟ってしまった。



「沙奈は自分の気持ちが身体の動きをストップさせちまってる。

無理だって決めつけるのも、出来るって思いこむのも全部自分なんだぞ。


どうせ無理だって思ってるやつが、いくら練習したところで出来るようになるわけねぇじゃん」



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