リトライ。




「今度は俺が沙奈のことを救いたい

そう思ってたくさん話しかけまくった」


陽介の手元からするりとボールが落ちた。

ダム、ダムと小さな音を立てて弾むボールを見つめる。



忘れられなかった、この音も。

体育館の様子も、バッシュの擦れる音も。


本当は嫌いだったわけじゃない。

見たくなくて目を背けていただけだ。



「沙奈。だから俺にとって沙奈は特別なんだ。他の人とは違う」


ーードキン。

まっすぐな瞳がぶつかる。


厳しく指導してくれたのも、

私に言葉をかけてくれたのも全部


私を思ってのことだって知っている。


「陽介、私ね……」


後悔が生み出すのは弱さしかないと気がついた。


過去のことに囚われても、足を引っ張るだけだと分かった。



「変わりたい。もっと強くなりたいんだ……」




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