リトライ。
「すごい……!」
「沙奈のおかげだよ。あの時はありがとな」
私は首を振る。
あの時の私が、誰かの力になっていたなんて思いもしなかった。
「まっ、残念ながら次の試合は負けちまったんだけど」
「そっかあ……」
引退試合。
じきに私たちにもやってくる。
もう取り戻すことの出来ない高校3年間を背負って向き合い勝負する。
勝っても負けても1度きりの夏。
胸を張って頑張れたって言えたらいいな。
じりっと砂の音がして陽介が立ち上がる。
ボールを持った彼が「行こうか」と声をかけると、私は言った。
「待って、陽介……ひとつだけ言いたいことがあるの」
「なんだよ」
陽介は不思議そうにこっちを見た。
「引退試合が終わったら、陽介に伝えたいことがある」