リトライ。
「陽介、お疲れ様」
「おう、沙奈。見に来てくれてありがとな」
陽介はタオルで顔全体の汗を拭った。
「試合圧勝だったね、今日の陽介すごかったよ」
私がそう言うと、陽介は吐き捨てるように言った。
「いや、あんなのまだまだ。あれくらいじゃ全然ダメだ」
陽介の顔は険しく、タオルを握り締めていた。
「陽介?」
少し違和感があった。
力が入り過ぎている……気がする。
この間、少し表情が柔らかくなったと思ったのに
3週間もたつと、前のような力の入った陽介に戻ってしまっている。
「陽介、あのね……」
彼に声をかけようとした時。
遠くから「集合」という声が響く。
「じゃあ、ありがとうな」
陽介はそう言って、手を振ると慌ててチームのところへ向かっていった。
不安だ。
陽介からもらったリストバンドを握りしめる。
いつもの陽介が少し力が入り過ぎてるくらいならいいけど……。