リトライ。
コーチは言う。
競った試合での交代はリスクがあった。
休憩終了のブザーが鳴り、第2ピリオドが始まる。
私たちはベンチから立ち上がり、観客席に視線を映した。
たくさんの人がいる中、陽介の姿を見つけることが出来なかった。
「陽介……」
小さくつぶやいた言葉は観客の声援にもみ消された。
コートに向かう。
「青ボール」
私たちのボールから始まり、ゆるやかなパスで3Pラインまで繋いでいく。
そこから攻められる隙を見計らっていたけれど、隙が無かった。
特に私のことをマークしている8番のディフェンスが上手い。
ドリブルをつき、パス回しを何度が繰り返す。
しかし、中には切り込めない。
外から打てる隙もなく、時間を見ると24秒計が残り5秒を指していた。
24秒。
私たちが攻めるために決められた時間だ。
そのままボールを待ってたらタイムオーバーになる。