リトライ。


ざわざわと、溢れ出す気持ちを押し込める。


違うんだもう。
興味ないんだ。


そう心に言い聞かせても、目をそらせない。


シュートを打ちたい衝動。
走りたい衝動に駆られる。


あんなに嫌な思いをしたのに。

あんなに泣いたのに。


キュッと鳴る体育館の床が

弾むボールの音が私の身体に呼び掛ける。


”バスケしないの”って。


ーーしたくない。


もう忘れたい思い出だ。


私は逃げるかのように、ぎゅっと目をつぶった。


「気を付け、礼」

「ありがとうございました」


気づけばいつの間にバスケ部の紹介は終わっていた。


視界と聴覚に訴えかけてくるそれはどうしようもなく溢れて来て止まらない。


私はぎゅっと手を握り締めていたようで、手の平に赤くなった爪のあとがついていた。


「以上で部活紹介を終わります」


終わった……。


バスケ部以降の部活紹介はなにも覚えていなかった。


興味ないのに、
好きじゃないのに、

こんなにも私の心を揺さぶってくる。


< 24 / 266 >

この作品をシェア

pagetop