リトライ。



ここで決めなくちゃ。

フリースローラインに立つ。


審判が私にボールを渡すと

盛り上がっていた会場はシーンと静まり返った。


みんなが私を見ている。

ずん、と重たい気持ちが肩に降りかかる。


決めなくちゃ。

心臓はドクドク、胸を打つ。


ここで外したら……?


私のせいで負けたことになる。


そんなことがあったら、

今度こそ私は立ち直れないんじゃないだろうか。


ボールを持つ手が小さく震えだす。


ゴールが遠い。


ああ、どうしよう。

このままじゃまずい。


そんな考えが胸をよぎった時。


「沙奈ー!!」


静かな会場に、大きな声が響き渡った。


ざわざわと会場がざわつく中、私はある人だけを見ていた。



「陽介……っ」


私の目に映ったのは、彼の姿だった。


来て、くれたんだ……っ。

じわり、と涙が浮かぶ。



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