リトライ。
嫌だった。
「は〜〜終わった。どうだった沙奈?私は料理部に決めたよ」
「やっぱりそっか。私は……なにも入らないことにした」
「そうなんだ、でもバスケ部すごかったよね!やりたくなったりしないの?」
教室に向かう廊下で歩きながら私は答える。
「しないよ」
気にしてないように言えたかどうか不安だった。
やりたくなったりなんて、しない。
中学を引退してから、練習用に買ったボールを捨てた。
もうすり減っていてツルツルだったこともあるけれど、理由はそれじゃない。
必要がなくなったからだ。
ボールは半年以上触っていない。
体育館に後輩の様子を見に行くこともしなかった。
だから久しぶりにシュートしている姿を見て身体が懐かしくおもったんだろう。
過去の自分を思い出してしまった。
ただそれだけだ。