リトライ。



嫌だった。


「は〜〜終わった。どうだった沙奈?私は料理部に決めたよ」

「やっぱりそっか。私は……なにも入らないことにした」

「そうなんだ、でもバスケ部すごかったよね!やりたくなったりしないの?」


教室に向かう廊下で歩きながら私は答える。


「しないよ」


気にしてないように言えたかどうか不安だった。

やりたくなったりなんて、しない。


中学を引退してから、練習用に買ったボールを捨てた。

もうすり減っていてツルツルだったこともあるけれど、理由はそれじゃない。


必要がなくなったからだ。


ボールは半年以上触っていない。


体育館に後輩の様子を見に行くこともしなかった。


だから久しぶりにシュートしている姿を見て身体が懐かしくおもったんだろう。

過去の自分を思い出してしまった。


ただそれだけだ。

< 25 / 266 >

この作品をシェア

pagetop