リトライ。




「……でもね、今日の試合は一度も思わなかった」


今までで一番、心の底から楽しめた試合だった。

最高に、最高に楽しかった。


バッシュの擦れる音、

シュートを放つ瞬間、ファールをもらえた瞬間。


目をつぶれば、今もすぐに浮かんでくる。


ああ、本当に幸せだった。


「最後のシュートを打つ前。

会場全体が静かになったのが少し怖くなったの。


手が震えて失敗したら、なんて考えた時にね、陽介の声が聞こえた」


まっすぐに私の耳に届いた。

陽介の呼ぶ声で全てを思い出した。


ずっと、練習して来たんだから大丈夫だって。


「その時、心にある全てがふっと消えたみたいに軽くなって、

最後のシュートを打てたの」


陽介は優しい表情を見せる。


「ボールがゴールに入っていった時、色んなことを思い返した」



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