リトライ。



苦しいことも、楽しいことも、

泣いたことも全部思い出した。


それでも。


「楽しかった。バスケをするのが……」


どんな結果になっても必ず陽介に伝えると約束した言葉。

こんなにもまっすぐに伝えられるなんて思いもしなかった。


「陽介、私ね……バスケが好き」


簡単な言葉かもしれない。

それでも私にとってはしっかりと口に出せるまで時間がかかった。


大切な、大切な、重みのある言葉。


バスケは嫌いだと言って遠ざけて来た。


心が辛いから見ないフリをして逃げて来た。


本当は好きなのに。


好きな気持ちを一生懸命隠している自分は苦しくて、

それでも行き場のない気持ちを


どこにぶつけることも出来ずに心に押し込んだ。


逃げている自分が楽だと無理やり思うようにした。




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