リトライ。




「どうかしたの?」


すると陽介は私の顔を見ることなく言った。


「沙奈が最後にやった試合のこと思い出してた」


最後にやった試合か……。

もう半年も前のことなのに、昨日のことのように思い出せる。


「あのさ……ずっと気になってたんだけど」


陽介は言いにくそうに、私の方を見ては逸らしてを繰り返していた。


「何?」

「あのさ、沙奈が最後の試合でフリースローを打つ前……」


「うん?」


「リストバンドにキスしただろ?

あれの意味って、何?」


「な……っ」


まさかそんなこと聞かれると思わなかった私はかあっと顔を赤らめた。


「あ、あんなのはただの願掛けというか……意識してなかったから分かんないよ!」

「そっ、か」


陽介はあからさまに落ち込むと、ボールをつきながら言った。




< 260 / 266 >

この作品をシェア

pagetop