リトライ。



勝ち誇ったように笑う陽介。

落ちたボールを拾うと、彼は再びさっきの言葉を言った。


「沙奈、俺と付き合ってください」

「……はい」


私は静かにそう答える。



「いいのか?シュート決めたけど別に強制ってことじゃ……」


そんなことを言い出す陽介に私は言った。


「あのね、陽介。

さっき1つウソついちゃった……」


「なんだよ、怖えーな」


「リストバンド、あの時

陽介のこと思いながらキスした」


「な……っ、お前、今それ言うのズリィぞ」


「ふふっ」



体育館から外に出た私たち。

外は満天の桜が私たちを送りだしてくれていた。


ひとつの桜の花びらがひらりと落ちてくる。


3年前、この桜を見たとき。

虚しく思った。


でも今は違う。

役割を終えた桜はどうあがいても床へと落ちていく。


でもまた、来年になったらこうしてキレイに咲きほこって見せてくれる。



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