リトライ。
「よろしくな」
さっそく名前で呼ばれたことに不信感はあるのに、その笑顔を見て、心臓はドキドキと音を立てる。
不思議な人だ、と思った。
「じゃあボール持って」
「あ、待ってください。あの……私、バスケはあんまり……」
「本当に少しでいいから」
爽やかに笑う彼の頼みを断りきれずに、私はボールを渡される。
しぶしぶ中に入ると、そこには案の定誰もいなかった。
広い空間。
静寂に包まれたその場所は私が最後に体育館を目にした光景にそっくりだ。
「パスしてくれるだけで、いいんだ。パスからのシュート練がしたくて」
はっ、と我に返ると私は彼を見る。
バッシュの裏を手の平で滑らせるとまっすぐにゴールを見つめた。
走り出す彼の動きを目で追い、自然と膝を軽く曲げる。