リトライ。
何を知ってるっていうの?
すると彼は思いついたかのように言った。
「そうだ。そんなに逃げたきゃ、ここを超えていけよ」
手を横に広げて、私を通さないように邪魔をする。
「逃げるって何!?私は別に逃げてるわけじゃない」
もう彼と話しててもラチが空かない。
「いちいち私に構わないで!」
強くそう言って、歩き出そうとしたら彼は片手を広げたまま、私の前を遮ってきた。
「通ってみろよ」
「な……っ」
「俺のディフェンスなめんなよ?」
私が横から行こうとしても、彼はバスケみたいに相手を行かせないとばかりに邪魔をする。
右から行っても、左から行っても、
彼はいつまでも通してくれなかった。
「もっと本気で来いよ」
「いい加減しつこいよ!!」
意地でも通してくれない彼に強い口調で言い放つと、彼はぱっ、と手を下ろした。
やっと分かってくれたか……。
ため息をついた時、彼はまっすぐな眼差して私を見つめた。
「しんどくねぇの?」
「なに、が……」
「好きなもの、好きじゃないフリするのは」