リトライ。
好きなものを嫌いになる苦しさ。
俺はそれを知っている。
知っているからこそ、引きとめてやりたかった。
しつこいって思われても。
あの時俺は彼女の声に救われたから。
次の日の放課後。
コーチがバスケ会議に出席するということからバスケ部は休みになった。
空いた体育館。
そこに行かないわけがない。
バレたら怒られるけどじっ、としてはいられなかった。
着替えて室内ボールを取りだすると、体育倉庫の小さな窓から下校中の沙奈を見つけた。
よく彼女が目に映るのは俺が無意識に探しているからかもしれない。
俺は急いで体育館を出ると、彼女にかけよった。
「沙奈」
ゆっくりと振り返る沙奈は案の定、俺の顔を見るなり迷惑そうに眉にしわを寄せた。
「面倒くさいヤツが来たって思ってる?」
「……」
「まぁ、そうだよな〜でもさ、本当にこれで最後にするから一つだけお願い聞いてほしいんだ」