リトライ。



これは一種の賭けだ。


これで無理ならもう彼女には何も言わないようにする。

俺はゆっくりと彼女に伝えた。


「1on1しようぜ」


ふわり、と吹き荒れる5月の風はほんのすこし冷たさを含んで流れてくる。


彼女にこんなにも執着するのは、みて見ぬフリをしたくないから。


好きだったものを嫌いだと言う。

それは、苦手なことをやり続けることよりも苦しい。



「何言ってんの、するわけないじゃん!」


「1対1して何も感じなかったら、もう俺は沙奈に自分から話しかけに行ったりしないから。

これが本当に最後にする。だから1on1して欲しい」


真剣な眼差しで彼女を見つめた。

ごくりと息をのみ、彼女からの返事を待つ。


すると、彼女は考えるように唇を噛み締めてから言った。


「分かった……する。けど、本当にこれっきりにして」


バッサリと言い放たれた言葉に俺は力強く頷いた。


それでもいい。

沙奈の気持ちが少しでも変わってくれれば。


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