first love~世界で一番素敵な初恋~
西園寺は私を指輪を渡した人だと思っているから優しくしているだけ。
私は、確かに指輪は持っていたけど、もらった記憶がない。
だから西園寺の本当の婚約者は他に居る。
この指輪が私の元にあるのは、本当の婚約者から何かの理由があって私にたどり着いたもの。
だから、返さないといけない。
だから、伝えないといけない。
ちゃんと話してお別れをしないといけない。
私は西園寺に自分の気持ちを話す決心をした。
「西園寺、話があるの…………」
私はゆっくりと重い口を開いた。
本当は言いたくない。だけど、言わなくちゃいけない。
西園寺のことが好きだと分かった今、西園寺が本当にこの指輪をあげたかった人を想っているのが見ていられないから……自分の想いを告げて失恋するつもりだったのに、こんなんになっちゃって………
気付けば、私の目からは涙が溢れていた。
でも、西園寺に見られないように下を向く。
「何?」
私はゆっくりと深呼吸をすると、重い口を開いた。
「…………私を茨城に帰してください。」
その言葉が私にとっての一生懸命だった。