first love~世界で一番素敵な初恋~


私はそれ以上喋ることが出来なかった。
何故なら、すぐ目の前に西園寺の顔があって彼の唇が私の唇を塞いでしまっているから。


それがキスだということを理解するのは時間が掛からなくて一生懸命、彼の胸を押そうとするけど動くことなく、私は抵抗出来なかった。


しばらくして、やっと唇が離れたと思ったら西園寺の目から涙が出ているのが見えて何も言えなかった。


いつもはあんな強気な西園寺なのに、目の前にいる彼は別人に見えた。


「唯那が……指輪を渡した相手が自分だと信じられないならそれでいい。」


…………え?


「だが言っとく。唯那がどんなに昔のことを思い出せなくても、俺が指輪を渡したのは唯那で間違いない。
それは今まで一緒にいて嫌という程思い知らされた。
でも、今はそんなことどうでもいい。
唯那が思い出せないなら、もうそれでもいいんだ。」



西園寺は私の言ったことを分かってない。


「あの、西園寺…………」


「それと、俺が今、好きなのは思い出の唯那だけじゃない。」


「…………え?」


婚約者を好きじゃないなら、西園寺は誰が好きなの?


「唯那が俺に惚れてくれたように、俺も今、目の前に居る唯那に惚れている。
だから、唯那が茨城に帰ることはない。」


え、ちょっと待って。
西園寺が好きなのって……………


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