first love~世界で一番素敵な初恋~
ラケットのトスでサーブ権が俺に決まると、お互いに挨拶をしてからポジションに立つ。
その際、俺は審判からボールを受け取りながらベースラインの外側に立つ。
「鵬龍!鵬龍!」
「白樺ファイトー!」
練習試合にも関わらず、それぞれ公式戦で行う声援を送る。
形は練習試合だが、去年の覇者同士の闘いだから勝てば正真正銘日本一ってわけか。
その肩書きには興味はないが、負けるつもりもねぇ。
コールで試合が始まると俺はトスを上げて思いっきりサーブを打ち込む。
相手の女には悪いが、俺のサーブはうちのレギュラーでも返せない。
俺がサーブ権を取った時点でこの試合は俺の勝ちだ。
大観衆の前で悪いが、この試合は勝たせて貰う。
俺が打ったサーブは狙った通り、目にも止まらない速さでサービスラインぎりぎりに入った。
これでサービスエースが決まったと俺を含め、俺のサーブを知ってる鵬龍学園の生徒誰もが思った。
でも彼女は屈するどころか、いとも簡単に俺の左を打ち抜いた。
「嘘、だろ?龍我がリターンを決められた?」
今まで誰も打ち返したことがない俺のサーブを余裕で……サービスエースを確信していた俺はその場から一歩も動けなかった。