first love~世界で一番素敵な初恋~
「この2つの指輪の模様を北に向ける。
そして、裏に向けると左の裏側に紋章が小さく彫ってある。」
確かに同じ位置の裏側に指輪の紋章があった。
「この紋章は西園寺家を表す紋章だ。
そして、左……つまり西は西園寺の名にある西を示したもの。
表の模様は違えど、西園寺家の婚約者が持つ指輪の裏側には必ずこれが刻まれる。
つまり、これが俺の婚約者という証拠だ。」
それは否定出来ない決定的な証拠だった。
私は信じきれなくて何も言えなかった。
「納得した様子だな。」
西園寺さんは勝ち誇ったかのようにフッと笑う。
「だからってそんなの認められない……」
私は小さい声で囁くように言った。
「は?」
「これがあなたの婚約者が持つ物だということはよく分かりました。
でも、私にはあなたと会った記憶もこの指輪を貰った記憶もない。
だからきっとどこかで拾ったんだと思います。
これがあなたの婚約者が持つ物だと言うならお返しいたします。」
「は?ちょっ………」
「だから、早くこれを持って帰ってもらえませんか?
私が婚約者じゃないと分かればもう用はないですよね?」