first love~世界で一番素敵な初恋~
「なぁ、いい加減、泣き止めよ。」
と、声が聞こえた方を見てみると、そこには足を組んで私の姿をじっと見る西園寺さんの姿があった。
「誘拐犯!悪魔!鬼!」
私は近くにあったクッションを西園寺さんに投げつける。
「私はあんたの婚約者じゃないってちゃんと言ったじゃないですか!
指輪もちゃんと返したじゃない!
早く家に帰らせてください!」
私は大きな声で西園寺さんに向かって叫んだ。
「それは無理だ。
西園寺家のしきたりで一度この指輪を渡したら婚約者の変更は出来ない。
つーことで、これはお前がちゃんと持っとけ」
そう言うと、西園寺さんは私に指輪を渡す。
「だから、私は指輪を貰ったことなんかないって言ってるじゃないですか。
どこかで拾っただけなんです!
婚約者を探してるなら他を当たってください!」
何度も拾った物だと言ってるのに、この人は一向に信じてくれない。
「俺が指輪を渡したのは間違いなくお前だ。
何故お前の記憶がないのかは知らないが、これからじっくりと思い出させてやる。」
彼の目は至って真剣でふざけてるようには思えなかった。
私、昔この人に会ったことがあるの?
どんなに思い返してみても彼と会った記憶なんて私にはない。