雫光
無言で歯を食い縛る。
思い出す度に恐怖感と孤独感が襲い来る。
(腑抜けめ)
就友は自分を叱咤した。
就友は和泉家の長男として生まれた。
優しい母と、美人な姉と気難しい父がいた。
しかし、就友がまだ幼い頃、母が亡くなった。
自殺だ。
何故だかは分からない。
そして、父はその衝撃で狂ってしまった。
毎日、暴力を振るう父から就友は姉を守り、暴力を受け続けた。
そんなある日、そのことを知った黎明の兄が3人を父から引き剥がした。
黎明の兄は姉と就友の幼い手を強引に引っ張り、連れ出す。
『やめろ!!おれは……おれは……』
抵抗したが、無駄なようだった。
就友は訳も解らず、諦めて泣き叫びながら足を動かした。
姉は心底、安堵していた。
だが、就友は違った。
両親がいなくなってしまったという事実が悲しくて怖かった。
何度も父に会いたいと泣き叫んだ。
しかし、それは叶うことなく、父は亡くなった。
話によると、就友というストレスの捌け口がなくなったことで、そのストレスが自分にぶつけるしかなくなったことが原因で自殺したのだろうということだ。
就友は姉と違い、母を知らない。
親というものが何なのかが分からない。
父のような者が親という存在だと思っていた。
暴力を奮われても尚、大切な家族だと思っていた。
「親という存在がなくても、手を差し伸ばしてくれる人がいたら、それでいいんじゃないかな?」
大和御前は明け透けに笑う。
「ね!」
「……」
それを見た就友は、先程の感覚がなくなり、少し安堵した表情になった。
「そうかもしれませんね。」
就友は目を細めた。
「だから、大和は弾正と遊ぶのじゃ!」
そう言いながら、常磐の頭を撫でた。
「大和は、弾正の噂しか知らぬ。遊ぶようになたのも、最近の話じゃ。」
語るように言う。
「じゃがな」
満面の笑みで二人を見た。
「だからといって、見捨てられなんだ。」
「慈悲ならば、却って虚しいだけですよ。」
就友は冷たく言う。
「ううん。大和はな、初めて弾正を見た時は強い魔王だと思った。次に見た時は出陣前じゃった。やはり、強いと思った。」
大和御前は言う。
「そして、三度目は幸せそうな顔じゃった。」
遠い過去を見る目で言った。
「今は、受け止めきれない心が壊れた姿。」
そう言いながら常磐を見る。
思い出す度に恐怖感と孤独感が襲い来る。
(腑抜けめ)
就友は自分を叱咤した。
就友は和泉家の長男として生まれた。
優しい母と、美人な姉と気難しい父がいた。
しかし、就友がまだ幼い頃、母が亡くなった。
自殺だ。
何故だかは分からない。
そして、父はその衝撃で狂ってしまった。
毎日、暴力を振るう父から就友は姉を守り、暴力を受け続けた。
そんなある日、そのことを知った黎明の兄が3人を父から引き剥がした。
黎明の兄は姉と就友の幼い手を強引に引っ張り、連れ出す。
『やめろ!!おれは……おれは……』
抵抗したが、無駄なようだった。
就友は訳も解らず、諦めて泣き叫びながら足を動かした。
姉は心底、安堵していた。
だが、就友は違った。
両親がいなくなってしまったという事実が悲しくて怖かった。
何度も父に会いたいと泣き叫んだ。
しかし、それは叶うことなく、父は亡くなった。
話によると、就友というストレスの捌け口がなくなったことで、そのストレスが自分にぶつけるしかなくなったことが原因で自殺したのだろうということだ。
就友は姉と違い、母を知らない。
親というものが何なのかが分からない。
父のような者が親という存在だと思っていた。
暴力を奮われても尚、大切な家族だと思っていた。
「親という存在がなくても、手を差し伸ばしてくれる人がいたら、それでいいんじゃないかな?」
大和御前は明け透けに笑う。
「ね!」
「……」
それを見た就友は、先程の感覚がなくなり、少し安堵した表情になった。
「そうかもしれませんね。」
就友は目を細めた。
「だから、大和は弾正と遊ぶのじゃ!」
そう言いながら、常磐の頭を撫でた。
「大和は、弾正の噂しか知らぬ。遊ぶようになたのも、最近の話じゃ。」
語るように言う。
「じゃがな」
満面の笑みで二人を見た。
「だからといって、見捨てられなんだ。」
「慈悲ならば、却って虚しいだけですよ。」
就友は冷たく言う。
「ううん。大和はな、初めて弾正を見た時は強い魔王だと思った。次に見た時は出陣前じゃった。やはり、強いと思った。」
大和御前は言う。
「そして、三度目は幸せそうな顔じゃった。」
遠い過去を見る目で言った。
「今は、受け止めきれない心が壊れた姿。」
そう言いながら常磐を見る。