星の音 [2014]【短】
女性を店先まで見送ると、彼女は詩集の入った紙袋をしっかりと抱き締めた。
「コーヒー、ご馳走様でした。それから、素敵な詩集をありがとうございました」
「いいえ。こちらこそ、お話出来て嬉しかったです。ありがとうございました」
「私の方こそ」と返した女性と顔を見合わせ、どちらとも無くフワリと笑みを浮かべた。
「じゃあ、お気をつけて」
「はい」
満面の笑みを見せた女性は、すっきりとした表情をしている。
その心に寄り添った一冊の詩集が、きっと彼女と恋人を仲直りさせてくれるだろう。
頭をペコリと下げた女性は、漠然とした予感を抱いていた私に笑顔を残して歩き出した。
小さくなっていく彼女の後ろ姿は、雨が降り始めた頃に目にしたものよりも凛としている。
思わず柔らかな笑みを零し、それから頭を下げた。
「またのご来店をお待ちしています」
ここは、小さな本屋。
大型書店の品揃えには敵わないけど、一人一人に合った本をオススメ出来るのが自慢。
「今日はそろそろ閉めましょうか」
夕陽に染まる空に向かって伸びをし、明日はどんなお客様と出会えるのだろうと微笑んだ――…。
END.
「コーヒー、ご馳走様でした。それから、素敵な詩集をありがとうございました」
「いいえ。こちらこそ、お話出来て嬉しかったです。ありがとうございました」
「私の方こそ」と返した女性と顔を見合わせ、どちらとも無くフワリと笑みを浮かべた。
「じゃあ、お気をつけて」
「はい」
満面の笑みを見せた女性は、すっきりとした表情をしている。
その心に寄り添った一冊の詩集が、きっと彼女と恋人を仲直りさせてくれるだろう。
頭をペコリと下げた女性は、漠然とした予感を抱いていた私に笑顔を残して歩き出した。
小さくなっていく彼女の後ろ姿は、雨が降り始めた頃に目にしたものよりも凛としている。
思わず柔らかな笑みを零し、それから頭を下げた。
「またのご来店をお待ちしています」
ここは、小さな本屋。
大型書店の品揃えには敵わないけど、一人一人に合った本をオススメ出来るのが自慢。
「今日はそろそろ閉めましょうか」
夕陽に染まる空に向かって伸びをし、明日はどんなお客様と出会えるのだろうと微笑んだ――…。
END.