星の音 [2014]【短】
私がコーヒーを用意している間、奥の椅子に腰掛けて貰った女性は店内をキョロキョロと見渡していた。
「本屋さんだったんですね」
「えぇ」
「近所に住んでるのに、何のお店なのかずっと知らなくて……。すみません」
「いいんですよ。小さな店ですし、流行っている訳でもありませんから。さぁ、どうぞ」
正直な女性にフフッと笑って、コーヒーカップを小さなテーブルに置く。
「ありがとうございます」
彼女は角砂糖を一つとミルクを入れ、スプーンでくるくると混ぜた。
私は薄めに淹れたブラックのまま、マグカップに口を付ける。
「これ、お店の名前ですか?」
テーブルに置いたままだったプレートを指差した女性に、「えぇ」と笑顔で頷く。
「星の音(ネ)って、素敵な名前ですね」
「ありがとうございます。実は、私が一番好きな本から貰った名前なんです」
「そうだったんですか。私、読書ってあまりしないんですけど、それは読んでみたいかも」
穏やかな口調で話す女性は、恐らく20代半ば頃だろう。
笑顔がとても可愛らしいけど、どこか悲しげな雰囲気を纏っていた。
「本屋さんだったんですね」
「えぇ」
「近所に住んでるのに、何のお店なのかずっと知らなくて……。すみません」
「いいんですよ。小さな店ですし、流行っている訳でもありませんから。さぁ、どうぞ」
正直な女性にフフッと笑って、コーヒーカップを小さなテーブルに置く。
「ありがとうございます」
彼女は角砂糖を一つとミルクを入れ、スプーンでくるくると混ぜた。
私は薄めに淹れたブラックのまま、マグカップに口を付ける。
「これ、お店の名前ですか?」
テーブルに置いたままだったプレートを指差した女性に、「えぇ」と笑顔で頷く。
「星の音(ネ)って、素敵な名前ですね」
「ありがとうございます。実は、私が一番好きな本から貰った名前なんです」
「そうだったんですか。私、読書ってあまりしないんですけど、それは読んでみたいかも」
穏やかな口調で話す女性は、恐らく20代半ば頃だろう。
笑顔がとても可愛らしいけど、どこか悲しげな雰囲気を纏っていた。