意地悪な君に






嘘だろ、美晴…


美晴に格好良いって思われたくて、必死になってたのに、俺の頑張りは美晴には届かなかったのか……





“柳君が生徒会長になればいいのに”





聞きたくなかった。
そんな言葉。

そんなにあいつの方がいいのかよ…



呆然と廊下に立ち尽くす俺は、最高にカッコ悪い……






その時、

ガタ…


教室の中で音がして、反射的に音のする方を見た。



扉の隙間から中が少し見える。



「-ーーーっ!」



見なきゃ良かった。

追い討ちをかけるように見たくない光景が目に飛び込んできた。





縮まるふたりの距離。
重なる影。


頭が視界を拒否する。
どうして、どうして…。

俺は、それ以上見たくなくて---





逃げた。




真っ直ぐ生徒会室へ行き、荷物を持つと鍵をかける。



もうこの部屋で、美晴との時間を過ごす事はないのかもしれない。

そう思うと悔しくて、情けなくて。



俺は一人で校門へ向かう桜並木を歩いた。

一人で帰るのはいつぶりだろう。




美晴が来てからは、二人で一緒に帰るか、美晴が橘さんと帰るのを見届けていたから、一人で歩く桜並木がひどく懐かしく感じる。



門を出ても真っ直ぐ帰る気分にはなれなくて、駅前のコーヒーショップへ入りカプチーノを飲んで時間を潰した。




温かいコーヒーは美味しかった。






でも……

やっぱり俺はまだアールグレイが好きだ……

いつか、アールグレイの香りを忘れられるのかな。





いや、きっと…

もう忘れなきゃいけないんだ……






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