意地悪な君に



こんなところでいつまでもうだうだしていても仕方がない。

わかっているのに…


美晴が通るかもしれない…

この期に及んでまだ姿を探してしまうなんて、バカバカしいと自覚している。


それこそ、あのふたりが一緒に帰る姿なんて見てしまったら、立ち直れない程落ち込むのも目に見えているというのに。




学校の方から流れてくる人の波に目を凝らす。

すると、意外な人物が目に入った。



「あいつ…柳か…?」



どうして美晴と一緒じゃない?


ふたりが一緒で無い事に安堵しつつも、美晴はどうしたと不安になる。


すると、柳の方も俺に気付き驚いた顔をした。

そして、小走りで店内に入ってきた。



「会長、何でここにいるんですか!?美晴ちゃん、生徒会室に行きましたよ!!」



美晴が生徒会室に?



「なんで…」




頭がついていかない。

だって、このふたりはさっき…



「もしかして…何か見ました?で、誤解したんじゃないですか?」



誤解?



「誤解ってなんだよ」



怪訝な目で柳を見るが、まるで動じる様子もなく俺の向かいに座った。



「さっき、教室で。誰かいるのは気付いてたんですが、覗いてたの会長だったんですね」

「…っ!覗いたわけじゃない、あれは偶然…っ」

「やっぱり」



なんだコイツ。
誘導に乗せられた俺は、アッサリ自爆してしまった。


しかも俺がいた事に気付いていたのか。



「最後まで見てたわけじゃないんですよね?俺が拒否されたトコとか」



拒否…?



「でも、俺が見たときは…」

「…未遂です」



俺の、勘違いだったのか?



「まぁ、拒否られなければしてましたけどね」



そう言うと柳はニヤっと笑った。




< 104 / 156 >

この作品をシェア

pagetop