意地悪な君に
こんなところでいつまでもうだうだしていても仕方がない。
わかっているのに…
美晴が通るかもしれない…
この期に及んでまだ姿を探してしまうなんて、バカバカしいと自覚している。
それこそ、あのふたりが一緒に帰る姿なんて見てしまったら、立ち直れない程落ち込むのも目に見えているというのに。
学校の方から流れてくる人の波に目を凝らす。
すると、意外な人物が目に入った。
「あいつ…柳か…?」
どうして美晴と一緒じゃない?
ふたりが一緒で無い事に安堵しつつも、美晴はどうしたと不安になる。
すると、柳の方も俺に気付き驚いた顔をした。
そして、小走りで店内に入ってきた。
「会長、何でここにいるんですか!?美晴ちゃん、生徒会室に行きましたよ!!」
美晴が生徒会室に?
「なんで…」
頭がついていかない。
だって、このふたりはさっき…
「もしかして…何か見ました?で、誤解したんじゃないですか?」
誤解?
「誤解ってなんだよ」
怪訝な目で柳を見るが、まるで動じる様子もなく俺の向かいに座った。
「さっき、教室で。誰かいるのは気付いてたんですが、覗いてたの会長だったんですね」
「…っ!覗いたわけじゃない、あれは偶然…っ」
「やっぱり」
なんだコイツ。
誘導に乗せられた俺は、アッサリ自爆してしまった。
しかも俺がいた事に気付いていたのか。
「最後まで見てたわけじゃないんですよね?俺が拒否されたトコとか」
拒否…?
「でも、俺が見たときは…」
「…未遂です」
俺の、勘違いだったのか?
「まぁ、拒否られなければしてましたけどね」
そう言うと柳はニヤっと笑った。