意地悪な君に





学校へ駆け込み、桜並木を走り抜ける。





-----いた。




昇降口、靴箱の前に美晴はいた。

こんな遠くから、しかも後ろ姿でわかってしまうなんて、

俺はどれだけ……




少しずつ近づき、すぐ後ろにいるっていうのに、美晴は俺に全然気付かない。




はぁーー



「なに溜め息ついてんだ、幸せ逃げるぞ」



美晴はゆっくり振り返る。



「悠…先輩」





そして、それっきり黙ったと思うと、静かに泣いた。


どうしたと問う俺に、嗚咽を漏らしながら必死で訴えてくる。





「ゆう…先輩、っが……

部屋にいなくて…わたし…、嫌われたのかな…って…」




すげー抱き締めたい衝動に駆られた。



なんで…
どうやったら俺に嫌われたなんて思えるんだ?


って言うか、俺に嫌われたら、そんな泣くくらい悲しいのかよ。



「バカ…

俺がおまえを嫌うなんて事、絶対ない

あるわけない」



美晴は驚いて顔を上げたけど、泣き顔が見られたのが恥ずかしいのかすぐに隠した。



「ひでー顔」



嘘。

めちゃくちゃ可愛い。



“絶対嫌いにならない”




それは裏返すと“すき”と言う意味で。
俺の気持ちの10分の1も言葉に出来なかったけど、今の美晴になら伝わる気がした。




そして、ふたりで一緒に桜並木を歩いた。




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