意地悪な君に
一度認めてしまった気持ちは、意外とふわふわ心地良くて、二度と手放したくないと思った。
ふたりで桜並木を歩く。
いつもの帰り道なのに、今日はふたりともいつもと違う。
“俺がおまえを嫌うなんて事、絶対ない
あるわけない”
あれは…
どういう意味?
私、期待してもいいのかな…?
ハッキリ言ってくんなきゃわかんないよ…
電車でも黙ったままで、でもこのまま帰るのは寂しいなって思っていると悠先輩が公園に寄っていこうと言ってくれた。
今までの二人なら、そんな恋人みたいな事したことない…
やっぱり今までの私たちとは違う…って事だよね?
私は笑顔で応えた。
でも…
私の余計な一言で、こんな事になるなんて…
何か話さなきゃと焦る気持ちが、考えるより先に言葉となって出てしまった。
「ここ、毎朝千紗と待ち合わせしてる公園なんだー」
何、私。
このどうでもいい情報。
もっとマシな話題、ないの?
「へぇ、仲良いんだな。小さい頃から仲良かったのか?」
でも意外にも悠先輩は興味を示した。
悠先輩は私の言葉に、気軽に答えてくれただけ。
なのに、私の心にチクリと何かが刺さった気がした。
「ううん、家は近いんだけど小学校は別だったから中学からだよ」
特に理由なんてないはず。
悠先輩は私の話題に乗っただけ。
なのに、もうずっと忘れていた光景を思い出した。
あれは、入学の翌日。
嫌がる私を悠先輩が迎えに来て、生徒会室へ千紗と一緒に行った日だ。
悠先輩が引きこもった奥の部屋に千紗が入っていき、しばらく2人で出てこなかった。
すっかり忘れていたし、気にも留めていなかった。