意地悪な君に
あの時何を話していたのだろう。
今まですっかり忘れていたくせに、気持ちを自覚した途端こんなにも動揺するなんて我ながら自分勝手で呆れてしまう。
それでも、私の頭は思い出したくない事ばかり思い出す。
―――――格好イイだけの男なら沢山いるよ?
でもね、勉強も出来てスポーツも出来て…
パーフェクトなんだって!―――――
―――――私、恋がしたいの!
自分から付き合いたいって思える人を探したい!―――――
忘れていた。
もともと悠先輩に興味を持っていたのは千紗だった。
もしかしたら千紗は…
千紗も、先輩が、すき?
そして、私の思考はさらに悪い方へと進む。
悠先輩は?
千紗はあんなに可愛くて性格もいいんだから、先輩が好きになっても不思議はない…
黙り込んでしまった先輩に、不安は募る。
「悠先輩?」
「ああ、ごめん…」
でも、先輩はそう言ったきりまた黙り込んでしまう。
一体、何を考えているの?
千紗の事?
お願い、もう千紗の話はしないで……
「悠先輩、やっぱり今日は変ですよ…」
せめて今日だけは…
嬉しかったから。
だからお願い、余韻に浸らせて。
でも、そんな願いも虚しく、悠先輩が口を開く。
やめて、お願い。
「あのさ、橘って中学の頃…」
「また千紗…」
それは、多分悠先輩には聞こえなかったと思う。
でも、次の一言は。
自分でもびっくりするくらい、はっきりと声になった。
「私、帰ります。」
嫌だった。
悠先輩が千紗の話をするのも、
大切な友達に嫉妬してしまう、醜い自分も――――――
だから先輩を公園に残し、私は逃げ出した。