意地悪な君に





そんなある日だった。

宿題を終えて、図書館からの帰り道。



「えっ、ゆーにぃ明日お誕生日なの?」

「そうだよ」



何気ない会話の中で、僕の誕生日の話になった。


とは言っても、僕は特に誕生日に思い入れがあるわけではない。




「じゃあ、明日は図書館は無しでいいよ?お誕生日パーティーでしょ?」




だから、美晴が当たり前の様に“パーティー”と言い出したのには驚いた。



「しないよ、パーティーなんて!したことないよ!」

「え、そうなの?でも、おうちでお祝いはするでしょ?」



美晴は美晴で、僕がパーティーをしない事に驚いているようで質問してくる。



普通はするものなのかなぁ…?



「お祝いもしないよ?」



僕がそう言うと、美晴は信じられない、とでもいうように目を大きくパチパチさせた。


そんなに驚く事?


いや、でも。
本当に誕生日のお祝いなんてやった事ないんだけどなぁ。



「じゃあケーキも…?」

「食べないよ」



なんとなく美晴の過ごしてきた誕生日が思い浮かんで微笑ましくなる。



「お父さんやお母さんはお祝いしてくれないの?」



見ると美晴は目に涙をためていまにも零れ落ちそうになっている。


なんで美晴が泣きそうなんだよ…
頼む、泣かないでよ。


僕は優しく説明するように言う。



「うちの両親はすごく忙しいんだ。仕事で。」

「そんなのっ!ゆーにぃ可哀想ぅあ゛ぁ~」



僕の頑張りも虚しく、案の定美晴は言い切ったと同時に泣き出してしまった。




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