意地悪な君に
なかなか泣き止まない美晴を公園のベンチに座らせ、自販機で買ったりんごジュースを渡す。
暫くは手に持ったままだったけど、涙が落ち着くと、コクリと一口のんで微笑んだ。
りんごジュースはお気に召したらしい。
「ゆーにぃは、寂しくないの?」
りんごジュースを飲みながら訪ねる美晴に、僕は、僕の両親の話をした。
ふたりとも医者で、毎日沢山の人の命を預かって仕事をしている事。
そんな両親を心から尊敬している事。
そして誕生日の朝は、必ずふたり揃って“おはよう”と起こしてくれる事。
「だからね、僕は寂しいなんて思わない。
ケーキがなくても、パーティーがなくても。
“おはよう”が一番嬉しいんだ」
そこまで話すと美晴は黙り込んで何かを考えている様子だったが、突然顔を上げたと思うと僕に言った。
「じゃあ明日もゆーにぃと一緒に宿題やる。」
拍子抜けの言葉だったけど、すっかり機嫌の直った美晴の様子に、僕はホッと息を吐いた。