意地悪な君に
「だから泣くなって。ウゼェ」
気付くと男が部屋の奥から戻ってきていて、私の前のテーブルにコトンと何かを置いた。
置かれたのは紅茶の入ったポットとマグカップだった。
「体冷えただろ。とりあえず飲んで暖まれ。」
さっきまでの言動とあまりに不釣合いなもてなしに、
「ありがとう・・・」
素直な言葉が出た。
優しいのか、意地悪なのか、親切なのか、
この男がよくわからず驚きつつも、カップに口をつける。
温かい紅茶は私を芯から温めてくれた。
「美味しい・・・」
紅茶はアールグレイだった。
私の一番好きな紅茶。
「俺のとっておきの紅茶。美味いだろ」
アールグレイが好きだなんて、変わってる。
普通、男の人は紅茶の種類なんて知らないものだと思ってた。
気付くと、私の涙はまたいつの間にか止まっていた。
フーフーと紅茶を温めながら紅茶を飲んでいると、何だか視線を感じる。
目線をあげてみると、男はニヤリを笑って私を見ていた。
ヤバイ・・・
イヤなヤツだってわかってるのに、見つめられるとついついドキッとしてしまう・・・
やっぱり顔「だけ」は確かに格好良いんだ・・・
「じゃあ、どうやって償ってもらおうかな」
男の発した一言に、私は耳を疑った。