意地悪な君に


「だから泣くなって。ウゼェ」



気付くと男が部屋の奥から戻ってきていて、私の前のテーブルにコトンと何かを置いた。

置かれたのは紅茶の入ったポットとマグカップだった。



「体冷えただろ。とりあえず飲んで暖まれ。」



さっきまでの言動とあまりに不釣合いなもてなしに、



「ありがとう・・・」



素直な言葉が出た。


優しいのか、意地悪なのか、親切なのか、
この男がよくわからず驚きつつも、カップに口をつける。



温かい紅茶は私を芯から温めてくれた。




「美味しい・・・」



紅茶はアールグレイだった。
私の一番好きな紅茶。



「俺のとっておきの紅茶。美味いだろ」


アールグレイが好きだなんて、変わってる。
普通、男の人は紅茶の種類なんて知らないものだと思ってた。



気付くと、私の涙はまたいつの間にか止まっていた。



フーフーと紅茶を温めながら紅茶を飲んでいると、何だか視線を感じる。

目線をあげてみると、男はニヤリを笑って私を見ていた。




ヤバイ・・・



イヤなヤツだってわかってるのに、見つめられるとついついドキッとしてしまう・・・

やっぱり顔「だけ」は確かに格好良いんだ・・・







「じゃあ、どうやって償ってもらおうかな」


男の発した一言に、私は耳を疑った。



< 12 / 156 >

この作品をシェア

pagetop