意地悪な君に
「はいっ、ゆーにぃの席はここだよ!」
美晴が僕に席を用意してくれたけど、明らかにそこはいつもは椅子の無い位置。
そう、それはつまり。
「お誕生日席……」
美晴、これはいくらなんでも恥ずかしいよ。
しかも椅子には何かよくわからない飾りがいっぱい付いてる。
でも、満面の笑みで僕が座るのをワクワクしながら待っている美晴を見ると、嫌だなんて言えない。
結局、僕は素直に座る。
次に、はい!と美晴が差し出したのは造花で出来たレイ。
あの、ハワイで首にかけるやつ。
美晴……
ちょっとはしゃぎすぎじゃないか?
でも、もちろん僕は素直に従う。
だって、美晴が本当に嬉しそうに笑うから。僕はその笑顔が一番好きなんだ。
僕の誕生日に、今までで一番可愛い笑顔を見せてくれたなんて、僕の自惚れかなぁ?
美晴ママの作った御馳走は、すごく美味しかった。
他人の僕の誕生日のために、いっぱい準備してくれて“おめでとう”をくれる優しい美晴ママ。
きっと美晴はそんな愛情をいっぱい受けて育ったから、こんなに優しい子になったんだろうな。
そんな事、恥ずかしくてとても言えないから、僕はこっそり心の中でお礼を言った。
美味しいゴハンに夢中になっていて、気付くと美晴が席にいなかった。
キッチンでなにやら動いている。
「美晴?何してるの?」
僕の呼びかけに美晴は、
「だめ!まだ見ないで!!」
とつれない。
そしてしばらくすると、トレー上の何か乗せてカチャカチャと、危なげなバランスでヨロヨロと歩いてきた。
まるでデジャブ。
あの雪の日、初めて美晴と会った日も、こんな事があったなぁ……
そしてまたあの時と同じように、奇跡的にトレーは無事にテーブルまで運ばれた。