意地悪な君に




「あれっ?」


部屋に入ると、意外な人物が先にいた。


「美晴ちゃん」

「柳君…え、何で???」



さっき私が教室を出る時、確かに教室で作業していたはずの柳君が、何故か私より先にこの部屋にいた。



え、え?
なんで???

びっくりして言葉に詰まっていると、たまらず柳君が笑いだした。



「ははっ、びっくりした?西階段で先回りしたんだよ」



そう言って悪戯っぽく笑うから、つられて私も笑ってしまった。


「あははっ!なんだーびっくりした!!遠回りじゃん、柳君足早いねー」

「驚かそうと思って走っちゃった」


得意気にしている柳君がなんか可笑しい。
私はくすくすと笑いが止まらなくて。


すると、柳君は真顔に戻って私を見ると、ポツリと呟いた。


「…やっと笑った」

「え……」

「最近、落ち込んでるみたいだったから。」



気付いてたんだ、柳君。
私が、元気無いこと。




「あ、うん…ちょっと、色々考えちゃって……」




柳君は優しいから。
私の変化にも気付いてくれて、私の欲しい言葉をくれる。


けど…甘えちゃいけないんだ。



「何があったかは聞かないけどさ、けど、美晴ちゃんには笑ってて欲しいな。」



そう言って、柳君は微笑む。

ああ、きっと私の考えてる事なんて全部お見通しで、私を困らせないようにまで考えてくれて。



「優しすぎるよ…柳君…」



聞こえないように、私はそっと呟いた。




それから、私達はペンキを探した。

柳君が深く追求してこないから、だから私もその話には触れず他愛もない雑談をしながら、目的のペンキを集める。



赤、青、黄、白、それから緑…



「うっ…結構重いねー」



両手に一つずつペンキの缶を下げる私。
柳君の手には合計3つの缶。



「またそんな無理しちゃって。貸して。」



そう言って柳君はわたしの缶をさらに1つ持ってくれた。
両手に2コずつ、合計4コ。



「えっ、それは重いよ!私大丈夫だよ、もう1コ持つよ!!」

「大丈夫だから、美晴ちゃんはドア開けて」



結構重いんだけどなーこの缶。

でも譲らない柳君に甘えて、私はドアを開けた。




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