意地悪な君に
「ね……」
私は柳君の袖をちょこんと摘まみ、軽くつんつん引っ張って、
「あの、私、先に教室戻るね……?」
背が高い柳君に聞こえるよう、少し上目遣いに小声で告げた。
「は?」
イライラとした声を隠そうともしないのは、勿論悠先輩で。
いつもより数倍怖い重低音。
だって、何か取り込み中みたいだし、私は外した方がいいかなって。
気を使ってみたんだよ?
「美晴ちゃん……ソレ可愛い。だから先輩怒っちゃったんだよ」
「へっ?」
少し赤い顔を隠すように、私とは反対側に顔を背けた柳君の不思議な言葉に、
「はぁ?んなわけねーし」
さらにキレる悠先輩。
こ…怖い。
久々にこういう悠先輩見たな。
こういう時の先輩には、口で争っても勝てないのは解ってるから、反論もしない。
「とにかく、勝手に二人で仲良くしてろよ。
――――お似合いだよ」
でも――――
その言葉は、痛いんだよ――――