意地悪な君に
「・・・償う・・・って???」
私はカップをテーブルに置いた。
逃げる体制。
やっぱりコイツ、変だ・・・!
「だって、俺、オマエのせいで噴水におちたんだぜ?償うのが当然だろ?」
「そんなの・・・!勝手に近づいて落ちたんでしょ!?」
だいたい、ホントに私を助けようとしたかなんてわかんないじゃない。
誰も見てないんだから。
そうだよ、怪しいよ。
こんな紅茶で優しい人だって思わせておいて・・・
あ!!!
「・・・まさか、弱み握るためにワザと落ちたんじゃ・・・」
ピキーーーーン
これはいけなかった。
私の失言に完全に男の纏うオーラが黒いものに変わったのがわかった。
男のこめかみがピクリと動く。
「オマエ・・・」
やばい。
なんかわかないけど、やばい気がする!
「だって、だって!!助けようとして落ちたわりには全然私気付かなかったし、本当に助けようとしてたのかなって・・・!!」
言葉で勝てないのはこの短時間で実感してたけど、なんとか巻き返さないとと、早口で主張する。
すると男は静かに口を開いた。
「声かけた。『おい』って。で、走って手を伸ばしたけどぎりぎり間に合わなかった。走ったから勢い止まらなくてそのまま噴水に突っ込んだけど。」
「え・・・・」
そういえば・・・
落ちる瞬間、何か声を聞いた気がする。
その後のインパクトで、完全に忘れてたけど。
っていうか、助けようとしたのが本当だったとしたら、
そのまま自分も落ちちゃうほどの勢いって、どんだけ一生懸命助けようとしてくれたのよ・・・
ズーーーンという効果音が似合う程にわかりやすく俯いた男は、さっきまでの黒いオーラではなく、悲しい顔をしているように見えた。