意地悪な君に



“お似合いだよ”なんて……


悲しくて俯く私に見向きもせず、悠先輩はさっさと生徒会室に入ってしまう。

やっぱり、悠先輩は意地悪なだけなの?



「もう、行こう…?」



私は柳君に促され、とぼとぼと歩き出した。


悠先輩、やっぱり私の事なんて何とも思ってないんだ……

期待しちゃって馬鹿みたい。
恥ずかしいよ。


落ち込むのは解っているのに、ぐるぐると考えてしまう。

思考は悪い方へ悪い方へ、ループする。



でも、柳君は落ち込む私に何も言わず側にいてくれた。



柳君はいつも優しくて、私を甘えたくさせる。
でも、甘えちゃいけないんだよね。



「ありがとね、柳君」



無意識に感謝の言葉を口にした私に、柳君は怪訝な顔をした。



「ありがとうって、何に?」

「だって……いつも優しいなって思って」

「んー俺、そんなに優しくないよ。基本自分勝手だし」

「えっ!柳君は優しいよ!!」



本気で驚いたけど、柳君は至って真面目に言う。


「そりゃ、美晴ちゃんには良いトコしか見せたくないから頑張ってるもん」

「えー、ナニソレ(笑)」

「笑うとこじゃねーから(笑)」


ホラ、やっぱり優しい。
そうやっていつも私を笑顔にしてくれる。



もしかして、私には意地悪な悠先輩より柳君が合ってるのかな……

なんて。



正直、もしかしたら柳君は私の事……って考えた事が無い訳じゃないけど……



でも心の中でもう一人のわたしが

「そんなワケないでしょ」

とブレーキをかける。



そうだよ、大体、柳君みたいな優しくて人望もある人気者が、私を好きにはならないよ。




危ない。

また恥ずかしい勘違いをするとこだったな。

学習能力の無い私。





< 130 / 156 >

この作品をシェア

pagetop