意地悪な君に




教室に戻ると、クラスメートが待ってましたとばかりに声を上げた。


ペンキが無くて作業出来ずに休憩してたみたい。


「遅っせーよ!ふたりで何やってたんだよー」


ついこの間まで面倒がってたとは思えないくらい。


「早く続きやろうぜ!」

「こっち衣装班空くか手伝うよー!」

「おぉ、すご……」


この団結力。
これこそ青春って感じじゃない!?


みんなの輪から少し離れてその光景を眺めていると


「美晴ちゃんのチカラだよ」


隣にいた柳君が言う。

「美晴ちゃんが頑張ったから、こんなに団結出来たんだよ、
自信、ついた?」

「わ…たし…?」


うん、と頷く柳君。

だけど。


「違うよ…柳君が色々教えてくれたから…
私一人じゃ何も出来なかったよ?」



そう、本当に。
私が胸を張れる事なんて、何も……


「何言ってんの!!」


いつの間に背後にはクラスでも目立つグループの数人が立っていた。


「頑張ったのはみはるだよ!
一人じゃ何も出来ないのはここにいる全員、誰だってそうだよ。みんながついてきたのは頑張ってる美晴がいたからでしょ?
アンタが誰よりも自信持たなくてどーすんの!!!」


周りにいた何人かもうんうんと頷いていて、


「ね?」


隣では柳君が優しく微笑む。


なんか、なんか……
感動だなぁ……


嫌々だった委員長だけど、やって良かった。


皆を信じて良かった。



「今度こそ、自信ついたでしょ?」



柳君の確かめるような言葉に、私は黙って頷いた。

私は皆を信じて、皆はそれに応えてくれた。


今度は。
私が私を信じる番。



柳君を真っ直ぐ見た。
今の私の素直な気持ちを伝えたい。



「柳君、私いつも自信が無かった。だから、諦める事とか逃げる事に慣れてたのかも。
でも、逃げてホッとした時よりも、やり遂げた今の方が何倍も気持ち良いね!」



今思った事を伝えたくて、私は一気に話した。

私の勢いに柳君は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにいつもの笑顔になった。


そして、私に優しく言う。



「じゃあ、さ。
行ってきなよ。生徒会室。
気になってるんでしょ?

何があったかしらないけど、ちゃんと話してきなよ」




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