意地悪な君に



生徒会室に、悠先輩は“誰か”と一緒にいた――――


応接にも使う方の部屋なら誰がいても不思議じゃない。

けど、細く開けられたドアと悠先輩の隙間から見える室内には誰もいない。



「どうした?」



ぶっきらぼうだった先輩の口調が、心配を含んだものに変わった。
でも、私は顔を上げる事が出来ない。


――――だって、
今悠先輩の顔を見たら、きっと泣いてしまうから。


「いえ…たださっきのが、気になって…」


適当な言い訳も見つけられず、私はもごもごと言い澱むだけ。


「さっきのって、柳と話してた事か?」

「ううん、いいんです、気にしないで下さい。失礼します」


言うだけ言って深くお辞儀をすると、そのまま顔を上げずに踵を返し、私は逃げた。



「おいっ!」



もう遠くなった廊下の後ろの方で、私を呼ぶ悠先輩の声が響いてる。

でも、追いかけて来てはくれないんだよね。




生徒会室には、待っている“誰か”がいるから――――

私に見つからないように、奥の部屋に隠れさせた“誰か”が――――





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