意地悪な君に




あの時、悠先輩がなかなかドアを開けてくれなくて待っている時、確かに人の気配がした。


微かな囁き声。
パタンというドアの音。



多分、悠先輩は奥の部屋に隠れさせたんだろうけど……

悠先輩、その部屋に入る人って限られてるんですよ?




私がいたこの数ヶ月の間であの部屋に入ったのは、

生徒会室の悠先輩と木下先輩、そして私と、千紗――――




部外者は、応接用の手前の部屋に入る事はあってもあの奥の部屋には絶対に入らなかった。


ううん、正確には悠先輩が“入らせなかった”




だって、あの部屋には大切な資料がいっぱいあるんだもんね?




だから、ドアが開かないあの短い時間で、私には分かってしまったの。

だって木下先輩なら隠れさせる必要ないもんね。




だけど、私の心は諦めが悪くて。

もしかしたら生徒会のOBかもとか、やめたっていう元生徒会メンバーなのかもとか、



千紗であって欲しくはないと、色んな可能性を考えてた。






でも、少しだけ開いた扉から悠先輩が顔を覗かせた時、


香りが、した。





千紗の香り。




千紗は、いつも同じ香水をつけてる。
去年の誕生日に私がプレゼントして以来気に入っていつも付けてる香水。


それを私が間違えるはずない。





悠先輩といたのは、千紗だ――――



私はその時に確信した。





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