意地悪な君に
「千紗、あのね……」
最初の一言を発するのにはかなりの勇気が必要だった。
でも私は、少ない勇気を振り絞り、その一歩を踏み出した。
「私、千紗に聞いて欲しい事があるんだ…」
優しく肩を撫でる手が、一瞬ピクリと震えた気がした。
だけど、もう引き返さない。
そして、千紗も口を開く。
「私も。
私も美晴に話さなきゃいけない事があるの。」
真っ直ぐに私を見る千紗の目は真剣で、ついにこの時が来たかと私は両手の掌を握り締めた。
お互い話が長くなるのは察していたので、続きは昼休みに屋上で話す事になった。
そして私達はいつも通り、仲良くお喋りしながら学校へ向かった。
何事も無かったかのように、
夢中で話した――――
――――楽しく笑いながら、
もしかしたらこんな風に、千紗と笑い合えるのは最後のなるのかな、って、
ほんのちょっとだけ思った。