意地悪な君に
「と、まぁ、そういうワケなの。美晴には早く話したいと思ってたからスッキリした!」
そう言って笑う千紗は、本当に恋する女のコの顔で、すっごく可愛い。
信じられないけど、本当にあのお兄ちゃんの事が好きなんだ……
「でも、なんで???何がきっかけ?」
お兄ちゃんは3年前から東京で一人暮らしだから、私も滅多に会わないのに、いつ紗千は好きになったんだろう?
「中1の夏休みにさ、千紗の家に宿題しに泊まりに行った事あったでしょ?」
中1……
……あ、あった。
溜まった宿題をするため千紗が泊まりに来て。
…そういえばあの時、お兄ちゃんも家に帰って来てた。
「…あったね、そんな事」
「うん。あの時、美晴は居眠りしちゃって。私一人で宿題やってたら俊くんが来てね、手伝ってくれたんだ」
まじか、兄。
私が居眠りしている間に、そんな甘い時間があったとは…
「それで、優しくて勉強も出来る俊くんに憧れるようになったの」
「へー…」
何か、私の知らないトコで色々あったんだなぁ……
「それにね、入学式の時に美晴に話した“好きなタイプ”は俊くんの事なんだよ」
『格好イイだけの男なら沢山いるよ?でもね、勉強も出来てスポーツも出来て
パーフェクトなんだって!』
…あぁ
…あれはお兄ちゃんの事だったのか。
てっきり悠先輩の事を言ってるとばかり思っていた私が、どれだけ悩んだか。
やれやれと呆れる私を見て、悪戯っぽく笑う千紗は、悔しい事に今まで見た中で一番可愛かった。