意地悪な君に



「な・・・な・・・・」




フルフルと肩が震える。
もちろん、怒りで。



「さっきのは・・・落ち込んでたんじゃ・・・」


「あ?んなわけなーだろ。アンタちょろいな。すぐ騙されてんの。」



さっきまでの悲しい表情は消え去り、最初の印象通りの意地悪な雰囲気だけが残った。




「それくらいで落ち込むかよ。
あ、でも助けようとしたのは事実だから」


「だとしても・・・!」





ガラッ

その時、扉が開いて、誰かが入ってきた。



「いた!!悠!!なにしてんだよーーー!」




入ってきた人は、隣にいる私に気付き、


「あ、さっきの!」


と言った。





一拍遅れて私も気付く。

さっき、トイレの場所教えてくれたイケメンだ!



「あのっ、さっきは、ありがとうございました!!」



私は立ち上がり、満面の笑みでお礼を言う。



「オイコラ、俺にはあんな態度のくせに、この違いはなんだ」



となりで悪態つく男は無視する。
爽やか先輩も無視してるし。




「いえいえ。僕は木下一樹、宜しくね。」

「はいっ。1年の佐伯美晴です。」











「俺、まだ名前聞ーてないのに・・・」



ぶすっとした顔で男がつぶやいていた事を、私は知らない。



< 15 / 156 >

この作品をシェア

pagetop