意地悪な君に
「な・・・な・・・・」
フルフルと肩が震える。
もちろん、怒りで。
「さっきのは・・・落ち込んでたんじゃ・・・」
「あ?んなわけなーだろ。アンタちょろいな。すぐ騙されてんの。」
さっきまでの悲しい表情は消え去り、最初の印象通りの意地悪な雰囲気だけが残った。
「それくらいで落ち込むかよ。
あ、でも助けようとしたのは事実だから」
「だとしても・・・!」
ガラッ
その時、扉が開いて、誰かが入ってきた。
「いた!!悠!!なにしてんだよーーー!」
入ってきた人は、隣にいる私に気付き、
「あ、さっきの!」
と言った。
一拍遅れて私も気付く。
さっき、トイレの場所教えてくれたイケメンだ!
「あのっ、さっきは、ありがとうございました!!」
私は立ち上がり、満面の笑みでお礼を言う。
「オイコラ、俺にはあんな態度のくせに、この違いはなんだ」
となりで悪態つく男は無視する。
爽やか先輩も無視してるし。
「いえいえ。僕は木下一樹、宜しくね。」
「はいっ。1年の佐伯美晴です。」
「俺、まだ名前聞ーてないのに・・・」
ぶすっとした顔で男がつぶやいていた事を、私は知らない。