意地悪な君に
――――この味だ
って……?
なんか、懐かしむように聞こえたけど…
私が悠先輩に淹れてもらった事はあっても、私が悠先輩に淹れたのは初めてだよね…?
悠先輩は私の視線には全く気付かないようで、噛み締めるように紅茶を飲んでいる。
――――と言うか、
私の視線だけじゃなくて、遠巻きにしてる女子の何十個もの視線に動じない先輩は、
やっぱり大物なのか、
それともとんでもなく鈍いのか。
「あのっ、良かったらこれもどうぞ!焼きたてのパウンドケーキです!」
そうこうしている間に、さっきまで教室の隅からこちらを伺っていたクラスメートが、ついに痺れを切らしてしまったみたい。
「いいの?ありがとう」
爽やかに笑う悠先輩に、ザワッと色めき立ったのがわかった。
マズイな……
「ずるい!じゃあ私のクッキーも!」
「こっちのマフィンも!!」
案の定、さっきまで遠巻きにしていたクラスの女子達が、スイーツを手にどんどん集まる。
一人が行動に出ると、あとはもう堰を切ったように2人の周りに群がる女子……
あーこりゃもう、話すの無理だな……
そう察した私は、件の群れから離れたのだった…………