意地悪な君に




視界が遮断されたせいで、気配に敏感になる。

頬にそっと先輩の手が触れた。



「・・・っ!」



前髪に、何かが当たる感触が伝わってくる。




私、キス・・・され・る?


もう、逃げられないと覚悟を決めた。




・・・・・・・・。


・・・・・・・・。



あれ?



先輩はそこから動こうとしない。
まるで時間が止まったみたいに、固まってしまった。





そして、先輩は私の腕を掴んでいた手を、そっと離した。




え?
なんで・・・?




目を開くと、先輩は顔を隠すように背中を見せて、私から離れた。



「せんぱい・・・?」



私、またからかわれたの?

キスされるなんて勘違いして、面白がられただけ?

反応を見て、笑うつもりだったの?





だけど悠先輩は、


「いや、なんでもない・・」


と言って、ソファに深く沈んで顔を隠すように俯いてしまった。





てっきり、また「馬鹿、勘違いすんな」とか暴言吐かれると思ったのに。




でも、じゃあさっきのは一体なんだったの?

先輩、どうしたの?




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