意地悪な君に




そのまま先輩は振り返りもせずに、扉を開けると部屋を出て行こうとした。

そして、廊下に消える直前一瞬だけ立ち止まり、でも背中は私に向けたままで、



「紅茶、飲んでいいから」



それだけ言うと、今度こそ廊下に出て扉を閉めてしまった。










一人部屋に残された私は、なぜだか鼻の奥がツンとして、


あ、私、泣きそうなんだ


と初めて気付いた。





今私が悲しいのは、
意地悪を言われた事でもなく、
仕事を押し付けられたからでもない。





今私が悲しいのは…




先輩が出て行き、ひとり部屋に残されたからだ・・・







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