意地悪な君に




目の前に立った男は、さっきまで女子に囲まれていた悠先輩だった。




ほっぺにキスの騒ぎでそれどころじゃなくて、先輩には全く気付かなかった。





先輩は目の前に立って、私を見下ろす。


そして、優しく言う。




「佐伯さん」




笑顔だけど、笑顔だけど何か、何か怖い。

にっこり笑ってるんだけど、さっきまでの笑顔とは違う。

なんていうか、オーラが?




「せん・・・ぱい・・何ですか?」




おそるおそる聞く。


私と悠先輩の2人をギャラリーが囲むようにして、見ている。





「放課後も、生徒会室に来てね。2人でやれば早く終わるからね」




ギャラリーがザワッとなったのが解った。



「!!」



先輩のファンだらけのトコでなんて事言うの!?




「えーーーナニあの子!!」

「放課後“も”って、前にも2人っきりで何かしてたてコト!?」

「1年のくせに生意気じゃない?」



ファンの子達(いつも間にか1年以外もいるし・・・)の反感を買ってしまったみたい。


ギャラリーのコソコソ話は、近いから全部聞こえてる。

それは全て、あからさまに私に対する反感。




先輩にもそんなコソコソ話は聞こえているはずなのに、涼しい顔で、



「ね?」



なんて言ってくる。





何なの・・・

絶対わざとだ。



私が嫌われるように、わざとファンの前で何か関係があるように匂わす言い方したんだ。





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