意地悪な君に
「どーしたの?千紗」
突然立ち止まった千紗の背中にぶつかりそうになってびっくりした。
「ちさ?」
でも、千紗は返事もせずに、廊下の先をじっと見ている。
「???」
不思議に思い、千紗の視線の先をたどってみる。
「あ・・・。」
廊下の先、千紗の視線の先に見えたのは・・・
「ゆう・・せんぱい・・・・」
そこにはこっちをじっと見ている先輩がいた。
どうして・・ここに???
先輩は廊下の壁に腕を組んでもたれかかっている。
少しオレンジを帯びた陽の光で髪がキラキラとし、風にそよぐ。
目は、じっと私を見ている。
私と先輩の距離は結構離れているのに、吸い込まれるように先輩の姿に惹かれ、私は目が離せなくなってしまう。
時間が止まったように感じられた。
誰も言葉を発せず、誰も動かなかった。
・・・・・・
・・・・・・・・・・はっ!!
あっぶないーー!!
また、やられるところだった!!
なんなのアレ。なんかの魔術かなんか???
きのうから何回かなるアレ。
目が離せなくなって、不覚にも先輩がかっこよく見えてしまう、アレ。
すると、先輩がやっと口をひらいた。
「ナニ逃げようとしてんだよ。ふざけんな。そう簡単に逃げられると思うなよ」